岐阜県大垣市では、コロナ禍の中、国が道路占用許可基準を緩和する緊急特例措置(以下、緩和措置)を講じたことを契機として、その翌月の令和2年7月から駅通りの沿道店舗などにおける歩道上でのテラス営業支援を開始。
“まちなかを照らすきっかけづくり”というコンセプトから、『まちなかテラス(以下、まちテラ)』と名付け、駅通りの歩道のほか、駅周辺の広場や公園、河川区域など様々な公共空間を活用したエリア一体的な取り組みに広がっています。現在では、ほぼ毎日どこかでキッチンカーの出店などがあり、店舗にとっても新たな出店機会となっています。
現在は、緩和措置から歩行者利便増進道路(ほこみち)指定に移行しており、道路のさらなる自由度を高め、エリア一帯における公共空間の柔軟な活用を試みています。
この「大垣市版ほこみち」の紹介レポートが同様の課題を抱える自治体職員や公共空間の利活用に対するモチベーションが高いさまざまな方々にとっての後押しやアイデアのキッカケづくりになればと思います。
*本記事は、大垣市からの寄稿記事です。
【緩和措置の活用Before/Afterの様子】
新型コロナ対策として取り組み始めた「まちテラ」は、まちなかの連続性・回遊性を生み出すウォーカブル施策として発展し、さらにそこから多様な主体が協働する機会が生まれています。「まちテラ」参加店舗からは、キッチンカーの新たな導入や、SNS交流サイトによる情報発信など積極的な営業活動が生まれ、地域のまちづくり活動等と連携したイベントも実現しています。
「まちテラ」の参加店舗には、許可証の代わりに共通のステッカーと、許可敷地を示す芝シートを配布し、地域における一体感を醸成しています。
当初、「まちテラ」の取り組みは、コロナ禍による飲食店支援や中心市街地活性化のための社会実証実験的な試みでした。事業者や利用者に対するヒアリングやアンケート調査を通じて、その効果や可能性を実感し、利用ニーズに応じて実施区域を拡充するなど、エリア一体的な取り組みへと発展していった経緯があります。
これら公共空間における占用・使用手続きにおける主体は、大垣市であり、各施設管理者に対し、都市計画課が一括して占用・使用申請や関係機関との協議を行い、ワンストップ窓口でさまざまな活動に関する相談に応じています。
「まちテラ」に関する情報発信は、状況に合わせた迅速な発信や継続的な更新を図るため、市職員が行なっています。
都市計画部公式インスタグラム(『ogaki_city_design』)を開設し、「#まちテラ」を添えて、イベント情報等を随時投稿したり、市若手職員による庁内横断的な動画制作チームを結成し、市公式YouTubeチャンネルでイベント風景などを公開しています。
本動画は、都市計画課職員の子ども「りおさん」、「まおさん」、とシーズー犬「紋次郎」が、まちなかテラス区域内の大垣駅通りで、『はじめてのおつかいミッション』にチャレンジした動画です。ワンちゃんとのおつかいを通じて、歩いて楽しい商店街の魅力やお店の人の優しさに触れました。
「まちテラ」に関する各種情報発信ページ
実施場所は、初期から取り組んでいた駅通りや駅周辺広場から、徐々に増やしていきました。市役所西側の丸の内公園は、令和2年11月からの『MARUNOUCHIランチボックスプロジェクト』社会実験を経て、翌月12月に『まるのうちテラス』として「まちテラ」の対象区域に追加。毎週金曜日には、キッチンカーの出店やテラス空間が広がる憩いの場を提供しています。
http://www.machiterra.machizukuri.or.jp/list/キッチンカーについては、こちらのポータルサイトで出店者の情報、メニュー例、お店のSNSアカウントなどをみることができます。また、「まちテラ」に出店を希望する方にむけた申し込み情報も掲載しています。
毎月第1日曜日は「まち歩き!」をキャッチフレーズに、まちなかの公園や広場、歩道などのオープンスペースにおいて、マーケットやイベントを同時多発的に開催するウォーカブルなまちづくりイベント「まちなかスクエアガーデン」を令和4年4月から開催しています。
これは、「まちテラ」に関わる多様な方たちと対話を重ねる中で、商店街で開催していた既存イベント「元気ハツラツ市」を持続可能な市民参加型のイベントに変容していったものです。地元まちづくり団体の方などと一緒にイベントのあり方を見直し、官民協働のイベントへと発展しました。
その結果、新たな活動主体がまちに関わりやすいキッカケの場を創出しています。
令和4年2月には市の職員有志が非営利団体「すいとラボ」を結成しました。
「すいとラボ」では分散回遊型のマーケットイベント「まちなかスクエアガーデン」等のまちづくりイベントに係る企画や運営を支援しているほか、地元企業との地場産品の共同開発やその認知度向上を図るために、イベントにも年間を通じて出店しています。
出店者の立場で理解を深め、さまざまな方々とまちの課題を共有するなど、立場や枠を越えたまちへの関わり方を通じて、職員自身が水都大垣らしさを生かした持続可能なまちづくりを研究しています。
「すいとラボ」Instagramアカウント:suito.lab_ogaki
「POP UP」とは、いわゆるPOP UP STOREのように期間限定のお店を展開するイメージですが、ここでいう「POP UP」として最も重要視していることは、パパっと展開し、ササっと片付けることができる公共空間のPOP UPデザインという点です。人的にも金銭的にも時間的にも無理なく公共空間を使い続けるためのコツのひとつだと考えています。
これによって、「まちテラ」はイベント会社等への委託に頼らず、前述の市の職員有志やまちづくり団体のほか、ボランティアの方々などを含め、企画から設営・撤収まで、一緒に汗をかき伴走型でまちの賑わいの空間を創出するような緩やかなプラットフォームになっています。
こうして、多様なプレイヤーが主体的に関与し、市民参加型のまちづくりイベントとして、持続可能な活動の機会をつくりだしています。
「まちテラ」では、公共空間の環境を活かした季節ごとのマーケットや、様々なテーマを設定したイベントも生まれています。
「VAN WAN LIFE」Instagramアカウント:vanwanlife
多様な主体が関与するまちづくりイベントの企画・運営に、市職員として、また一個人として関わるなかで、最も大切だと思ったことは、『満足度>動員数』という考え方の重要性です。
人集めのための委託ありきのイベントを、前例踏襲で継続するより、多様な主体が関与し、その関わった方々や来場者の満足度が高まる取り組みを伴走型で支援することの大切さを学びました。
また、コロナ禍を受け、あらゆる事業分野での試行錯誤や既存の見直しが必要な時代となっています。前例が通用しない社会だからこそ、私は、これを変革のチャンスと捉えています。
ほこみちのような自由度が高く可能性を秘めた制度を自分のまちに置き換えながら、前例に倣うことなく、まず主体的にまちの人と一緒に試みることで、きっと満足のいく結果につながるはずです。
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