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2022.01.18

「ほこみち」から「面白いまちづくり」へ! 歩くことが楽しくなる道路の活用方法とは?-日本大学理工学部建築学科助教/一般社団法人ソトノバ共同代表理事 泉山塁威

 

泉山塁威さん プロフィール

都市戦術家、プレイスメイカー。日本大学理工学部建築学科助教、一般社団法人ソトノバ共同代表理事。1984年、北海道札幌市生まれ。都市経営やエリアマネジメント、パブリックスペース、ウォーカブルシティなどの研究・実践・メディア運営に関わる。主な著書に「タクティカル・アーバニズム: 小さなアクションから都市を大きく変える」(編著、学芸出版社、2021年)、「エリアマネジメント・ケースメソッド: 官民連携による地域経営の教科書」(編著、学芸出版社、2021年)など。グッドデザイン賞2021W受賞(Placemaking Japan /Park(ing)Day Japan)。

 

建物だけ考えていても、街は変わらない

 

――泉山さんの活動内容について教えてください。

泉山:日本大学理工学部建築科の助教と、パブリックスペースを豊かにしていくことを目指すメディアプラットフォーム「ソトノバ」の共同代表理事を務めています。現場では、池袋や新宿などで道路空間の活用に関する社会実験をしたり、人のアクティビティに関する効果測定に携わったりしてきました。直近では、路上駐車スペースを1日限定で小さな公園に変える「Park(ing)Day(パーキングデー)」というプロジェクトを開催し、2021年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

 

――パブリックスペースに興味を持ち始めた理由は?

泉山:僕は北海道出身なんですが、一時期埼玉に住んでいて。成人式で久しぶりに埼玉へ行ったら、街がかなり衰退していたんですよね。当時は大学生で、建築学科で設計を学んでいたのですが、「建物だけを考えていても、街は変わらないよな」と思って。そこから都市計画やパブリックスペースへ興味が移っていきました。

 

――「ソトノバ」で公共空間に関する情報を発信しようと思ったきっかけを教えてください。

泉山:2014年に池袋でオープンカフェの社会実験を行いました。そのとき、過去の事例をネットでいろいろ調べていたのですが、かなり探しにくかったんです。公共空間の情報が集約されている媒体は、それまでほとんどありませんでした。「パブリックスペースに特化したメディアプラットフォームが必要だな」と感じ、自分で作り始めたのがきっかけです。

 

コロナ禍でオープンレストランが広がった、
海外の事例に学ぶ

 

――都市計画やまちづくりに携わっている中で、「ほこみち」の意義をどう捉えていますか?

泉山:歩道って、基本的には「人が歩くための場所」です。しかし地方都市では車社会で、そもそも歩いている人がいません。歩行者がいなければ店が成り立たないし、なんとなく街が廃れている雰囲気になります。商業や地域経済と「人が歩いている」ことは、実は繋がっているポイントなのです。

一方、都心は歩行者が非常に多い。新宿や渋谷は、人の量に対して歩道が狭いですよね。ただ、歩行者をさばくことを目的にしてしまうと、「買い物したらすぐ帰る」となってしまう。ちょっと疲れたときに休憩したり、ベンチに座ったりできる場所は、公園だけでなく道路空間にも求めていくべきです。そういう点で、「ほこみち」の制度には大きな意味があると思います。

 

――海外では、道路をどのように活用しているのでしょうか?

泉山:アメリカやオーストラリアは計画都市で、もともと何もないところに道路をつくり、建物を建てています。クルマ中心に街を計画しているため、道路が広い。歩道も十分な幅があるし、オープンカフェも可能です。
コロナ禍の影響により、ニューヨークではオープンレストラン、サンフランシスコではシェアードスペース(歩行者と車が共存する空間)が広がりました。ニューヨークの場合、歩道だけでなく、車道を使っているケースが6割くらい。自動車の通行量が減ったので、路上のパーキングスペースを仮設的に客席にしたんです。

 

――コロナ禍で車が減ったぶん、外のスペースを有効活用したのですね。一方、日本ではどうですか?

泉山:2020年6月から「コロナ道路占用特例」により、全国で路上客席ができるようになりました。しかし実際は「うちの街には歩道がないから、制度を使えない」という声が多いようです。とくに東京は城下町で、もともと人や馬車のサイズで道路の幅が作られており、今もそのまま使われている。歩道があっても幅が狭いんです。
姫路や御堂筋で始まった「ほこみち」は、メインストリートなので道路幅員があり、豊かな歩道もあります。でも、そんな歩道がある街は全国にどれくらい存在するのか? と考えると、かなり限定されるでしょう。
海外でさまざまなオープンスペースの活用事例が出てきた理由は、歩道だけでなく車道も使っているから。量によって、質の高い使い方が出てきたのではないかと感じています。

 

道路の活用は「できない許可」から「できる許可」へ

 

――「ほこみち」を活用していく上でカギとなるポイントは? 

泉山:誰か「やってみよう」と言い出すかが大きいと思っています。そもそも商店街や飲食店に携わる人は、「道路空間が使える」というマインドになっていないですよね。それは行政側の問題もあります。
アメリカは、「店に道路空間を使わせてあげた方が、地域のビジネスがどんどん発展するだろう」という考え方です。一方、日本の場合は「民間の利益のために道路空間を貸すのはダメですよ」となる。このマインドセットを変えられるかどうか、がポイントになるでしょう。

 

――「誰が得をするか?」から「みんなにメリットがある」へ意識を変える必要がある、と。

泉山:そのためには、店の利益だけでなく、地域経済として好循環にしていく施策を講じなければなりません。1店舗だけだとおそらく難しいので、「複数店舗で集まって、稼いで、街に還元しよう」という構図をストリートから作っていくことが重要です。
やる気のある若い人が出てきて、汗をかいて活動し始めると、行政も「一緒にやりましょう」と進みやすくなるかもしれません。

 

――海外では、行政から許可を得るのが簡単なのでしょうか?

泉山:例えばメルボルンだと、「この通りならオープンカフェが可能です。歩道は1,800mm確保して、囲いを付けてください」といったルールがあります。それを守った上で、カフェがお店のコンセプトに合ったテーブルや椅子を置くわけです。道路占用許可じゃなくて「オープンカフェ許可」なんですよね。
一方、日本にはそういったルールがありません。申請する際は「道路をどのように使いますか?」といった話から始まり、毎回協議しなければならない。日本の行政も、道路の利用に対して「できない許可」ではなく、「できる許可」を進めていくことが重要です。

 

「ほこみち」と「ウォーカブルなまちづくり」の連携を

 

―「ほこみち」の活用を含め、将来的にどのようなまちづくりを目指していくべきなのでしょうか? ビジョンをお聞かせください。

泉山:まちづくりとなると、道路だけで考えるのは難しいですよね。「ほこみち」と「車や自転車だけが走る道」など、歩行者中心と交通優先の道路を街の中で住み分けしていく必要があるでしょう。
「この道路をほこみちにします」で終わりだと、意味がありません。駐車場や駐輪場をどうするかなど、ウォーカブルな街としての交通戦略をきっちり構築していくことが重要です。

 

――「ウォーカブルな街」とは?

泉山:「バリアフリーが整っている」「歩道が広い」は最低条件で、さらに「歩きたくなる道路」「快適性のある街」も含めてウォーカブルだと考えています。そうなると、道路とセットで魅力的なお店やコワーキングスペースなども必要になるでしょう。
国土交通省の都市局も、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」と称して、ウォーカブルなまちづくりを推進しています。「ほこみち」を推進する道路局と、ウォーカブルなまちづくりを議論している人たちがさらなる連携をしながら進めていくことは、非常に重要なポイントだと思います。

 

――「ほこみち」を活用していく上で、民間ができることは?

泉山:大掛かりなものより、スモールスタートで「ほこみち」をやっていこうという発想が大事です。例えばキッチンカーと「ほこみち」を考えてみましょう。ランチタイムにキッチンカーがくると、食事の提供だけでなく、テーブルと椅子も広げる。そうすると、普段はなにもない道路であっても食事スペースができますよね。
また、食事と一緒に折りたたみのテーブル・椅子をデリバリーしてもらって、食べたら片付ける、とか。テーブル・椅子の用意や保管場所、手続き上の問題もありますが、運用の手軽さを追求していけば、まちなかでも気軽にカフェができる。そんな「ほこみち」の活用もあり得るでしょう。

 

――それくらいの規模感なら、すぐにでもできそうですね。

泉山:「ここは使えない」「これしかできない」ではなく、「ほこみちを使えば、こんなこともできそうだ」というマインドに変えていく。それが面白いまちづくりにも繋がっていくのではないでしょうか。