天然のウォーカブル都市をアップデート!「長崎みち活会議」

2023/10/23

2023年7月30日、「ながさきみなとまつり」が開催されている夏の長崎で、「長崎みち活会議」が初めて開催されました。主催は長崎市のまちづくり団体N-TIPと長崎都市・景観研究所、そしてほこみち研究会の共催。会場は教科書でお馴染み「史跡出島」の目の前にある「出島表門橋公園」です。この日は公園内でマルシェイベントも同時開催され、賑やかな屋外空間での会議開催となりました。 

長崎は斜面地が多く、限られた平地に街が高度に形成されたコンパクトな地方都市です。路面電車や路線バス、タクシーといった公共交通が従実しており、都心部は歩いて移動するのが効率的。「長崎さるく」に代表される、まち歩き観光のメッカでもあり、まさに天然のウォーカブル都市です。 

そんな長崎でも、イベントや祭事で一時的に道路空間を活用することは多いものの、日常的に道路空間を魅力的に活用していく取り組みはまだまだこれから。2023年5月、旧長崎街道でもある国道34号が長崎県初のほこみち指定を受けたばかりのタイミングで、これからの長崎市の道路空間の活用を考える会議が開催されました。 

公共空間は「交響空間」

イントロインスパイアトークとして、ほこみち広報アドバイザーの山名清隆さんが爽やかな浴衣姿で登場。みなとまつりに合わせて、登壇者は浴衣を着てまつり風情の公共空間を楽しむという粋な計らい。山名さんからは、道路空間活用の最前線についてレクチャー。「公共空間は、人と人が交わる『交響空間』になって欲しい」と口火を切り、会場の熱が上がっていきます。そこから、来年予定されているパリ五輪の仰天計画を紹介。開会式はセーヌ川で開催され、選手入場はなんと船!セーヌ川沿いに60万人の観客席を設置し、セーヌ川の水質改善にも取り組み、高飛び込みの会場にもするという五輪開催計画に、長崎市民の目がクリクリと丸くなります。「パリは世界が驚くことをやろうとしている。日本が止まっている場合ではない。長崎はそれができるはずだ」山名さんは会場を鼓舞します。日本の先進事例として、大阪御堂筋の全面歩道化や東京高速道路KK線の公園化、仙台市青葉通りや定禅寺通りの車線の削減などについても紹介されました。 

「みちづくりを通して、どんな街にしたいですか?」 

続いて「ほこみちマインドトーク」として登壇した国土交通省道路局の安藝友裕さんは会場に投げかけました。そこから、いくつかの事例を紹介していきます。姫路駅前、東京都心の新虎通り、横浜市の日本大通り、ニューヨークのタイムズスクエア。どの事例も、道路空間を通して人々が生き生きとまちを楽しんでいる様子が会場にも伝わっていきます。「ほこみち制度により、道路空間の活用は『ダメ』から『できるかも』に変わっている」と安藝さんは続けます。そこからさらに神戸市のサンキタ通りや福井市の国道8号、岐阜県大垣市まちなかテラスなどの先進事例を紹介。特に大垣市の場合は、市職員が自ら熱心に情報発信を行なっている点を強調しました。「ほこみちは5月時点で、44市区町、119路線。これから広がっていくだろう」と今後を展望しました。 

続いて、国土交通省長崎河川国道事務所の大場所長より国道34号のほこみち指定について紹介。ほこみち指定されたばかりの国道34号の旧長崎県庁舎周辺は、西九州新幹線の開業など長崎市の100年に一度とも言われる都市開発のラッシュなどにより官公庁が減少し、交通量も減少傾向にある現状について説明がなされました。そこで、この国道34号周辺の賑わい創出が課題であり、県内初のほこみち指定を行なったとのこと。「今後は、市民の皆さんの意見を聞きながら利活用について検討したい」と意気込みを語りました。 

夕日が沈む絶景道路

長崎県土木部道路維持課の久野さんからは、「日本風景街道」にもなっている「ながさきサンセットロード」の活動が紹介されました。日本風景街道は、道路を地域の生活や交流の場として活用・発展させることを目的とした運動で、長崎県の西海岸をながさきサンセットロードでは景観スポットの整備や清掃活動、フォトコンテスト、見どころマップの作成などが官民で行われているそうです。 

繁華街再生の切り札「銅座川プロムナード」 

長崎市まちなか事業推進室の吉野さんからは、まちなかの賑わいづくり「まちぶらプロジェクト」について紹介されました。長崎市ではいま長崎駅や松が枝国際観光船埠頭などの再整備が行われており、駅や港から歴史文化あふれる「まちなかエリア」へ賑わいを呼び込む取り組みを進めているそうです。長崎市の道路は歩道が狭く坂が多い特徴がありますが、賑わいづくりのために長崎らしいみち活を進めていきたいと意気込んでいました。その切り札とも言えるのが「銅座川プロムナード」で、繁華街のど真ん中を流れる銅座川の左岸に広い歩道を持つプロムナードを新たに整備する計画が進行中とのことでした。 

勇気を持って公共空間をエンジョイ 

長崎市を中心に活動するまちづくり団体、長崎都市・景観研究所の平山所長からは、団体で取り組む様々な公共空間活用実験について報告がありました。「景観」を都市の現象として深く考察し、人々の営みや意識にアプローチすることを大切に活動しているそうです。住宅地にあるごく普通の「昭和公園」で、4月29日の「昭和の日」に昭和のファッションを身につけてピクニックをしてみたり、長崎駅前にある岩原川の水辺空間を楽しむ「ミズベリング岩原川」の活動において、身につけるテーブル「モバイルカウンターテーブル」を開発して飲食を楽しんだり、繁華街の空き店舗や空き地を活用したアートイベント「アーツ&スナックながさき運動」などについて紹介。長崎の人は恥かしがり屋さんが多いが、「勇気を持って公共空間をエンジョイすれば、長崎の暮らしはもっと楽しくなる」と呼びかけました。 

長崎のみち活の可能性 

先ほど登壇した山名さん、安藝さん、平山さんに加えて、ほこみち事務局の真田さん、株式会社ネイ&パートナーズの渡辺さん、長崎で活動するN-TIPの森さんも加わってパネルディスカッションがスタート。 

まずは、渡辺さんより、自身が携わった出島表門橋や長崎駅前のシェルター、新大工町の歩道橋など長崎のプロジェクトを紹介。「何か新しいことにチャレンジして新しいものを作ると、誰かが見てくれていて、それが全国に波及していく」と、チャレンジすることの重要性を指摘しました。 

森さんは、国道34号に隣接する旧長崎県庁舎周辺のまちづくり活動を紹介。「公共空間を使うのは民間であり、そういう人のアイデアや活動をベースにしながら、行政のルールを使うという循環が必要。国道34号のほこみち指定の話があったが、道を活用したいという想いを、どう制度にのせていくのかということが重要。実際に活動している人達の想いをスキームにおとすのかを考えていきたい」と話しました。 

平山さんは国道34号について「市民にとって象徴的な道であり、『長崎くんち』の神輿巡行などの大事な催事の時に使われる道路。国道34号は江戸時代の長崎街道であり、小倉までつながっていて、出島の渡来品を全国に届けた歴史的にも貴重な道」と市民としての想いを語りました。 

それに対して山名さんからは「『伝来』や『始まり』を長崎はたくさん持っている。伝来ブランドを活かしたフェスティバルの開催も面白いのではないか」と提案がありました。 

真田さんは、進行中の銅座川プロムナードについて深掘り。パネルディスカッションに飛び入りした長崎市の吉野さんは、「銅座川プロムナードについては、道路ができるまで期間があるので、道路を使ってやってみたいことを、社会実験しながら検討していきたい」と発言し、それに対して山名さんからは「地元だけでなく、英語で世界から活用方法を募集すべき。そういう仕組みがあれば面白い」と長崎の国際性を生かした道路空間活用の検討について提案がなされました。 

会場を巻き込み議論は白熱 

会場内からも続々と発言が続きます。ある参加者は「本日の話を聞いて感動した。長崎は歴史ある遺跡の都市であり、それを生かした公共空間の活用を」と長崎ならではの歴史に着目した声や、県庁関係者からは「県庁舎跡地と国道34号は一体的に考えていきたい」という前向きな発言が出るなど、議論は会場を巻き込み最高潮に。 

大学職員という参加者からは「今日のような話に、中学生や高校生もぜひ入れて欲しい」と若い世代の参画を望む声や、別の参加者の塾講師からは「今日、長崎の未来を考えたいと思い高校生を数名連れて来た。若者は一度外に出て、また戻って長崎に帰って来ればいいし、戻りたくなる街にしないといけない」と続けました。 

道路空間の活用の話題から、歴史、そして次の世代へと話題はつながり、長崎の「みち」と「まち」が持つ可能性と市民の熱い想いを感じることのできる一日となりました。ウォーカブル都市長崎を、道路空間からもアップデートしていく取り組みは、今後ますます期待できそうです!

会議終了後も終わることのない議論をよそ目に、みなとまつりの花火がイベントの最後に彩りを添えてくれました。