庁内横断ほこみちプロジェクトチームで、ほこみち制度導入を目指す!成田市「なりみち」プロジェクトの挑戦 

2024/01/15

成田国際空港を擁する千葉県成田市は、「おもてなしのまち成田」を掲げて訪れる人をもてなすまちづくりや景観づくりを進めています。その一環として、駅前広場や成田山新勝寺表参道周辺などを対象に、ほこみち制度の活用を検討中。2023年9月からほこみち制度導入にむけた社会実験も実施しています。

これら一連の取り組みを、成田市では「なりみち」プロジェクトと名付けています。なかでも特徴的なのは、部署横断の「成田市ほこみち推進プロジェクトチーム」を立ち上げていること。本記事では、そのプロジェクトチームのみなさんに、現在までの足取りと、今後の抱負を伺いました。

インタビュー参加者:土木課課長 富澤雅明さん、国際戦略特区推進課主査 藤原由揮さん、都市計画課係長 川島拓也さん、都市計画課主査 岩瀬晴美さん

聞き手:ほこみちプロジェクト事務局

各部からメンバーが集まり、勉強会からスタート!

――ほこみち制度の導入にあたり、市内道路のほこみち指定前から、プロジェクトチームを立ち上げたそうですが、そのねらいは?

富澤 以前に市内の国家戦略特区でのエリアマネジメントを検討したこともありましたが、地域からあまりニーズが感じられませんでした。そんなとき、道路法が改正されてどの自治体でも利用可能なほこみち制度ができることを知り、ぜひ活用したいと考えました。

ただ、道路としての使い方がすでに定着しているところを歩行者中心に変えることになるので、市民に使ってもらえるようにするにはまず、社会実験で試行してみようということになったのです。

そこで、道路活用に関係する部署からメンバーを集めて、プロジェクトチームを結成しました。具体的には、まず整備や管理の観点からは道路を担当する道路管理課と土木課、公園緑地課、交通防犯課。まちづくりの観点からは企画政策課、国家戦略特区推進課、都市計画課、市街地整備課。そして利用者の観点からは観光プロモーション課と商工課、文化国際課。これらの部署から各1名。さらに、部署を問わずに庁内から公募して手を挙げた5名を合わせ、合計16名が参画しています。

成田市ほこみち推進プロジェクトチームのメンバー

(成田市景観審議会会長・堀繁先生による勉強会にて)

 

――当初、ほこみち制度のどのような点に期待したのでしょうか?

富澤 自治体の裁量で自由に研究して、さまざまな道路の使い方をしてほしいというのが国のスタンスなので、利用の幅がこれまで以上に広がるのではないかと思いました。地域の団体などに限らず個人商店なども参加できますし。

何よりも、ほこみち制度ができて、全国的な機運の高まりを肌で感じたことが、取り組みの動機としては大きかったですね。

――プロジェクトチーム立ち上げ時の様子を教えてください。

富澤 まず土木課の私が発起人となって、道路管理課長と相談しながらプロジェクトでの取り組みを提案しました。庁内の賛同を得て各課からメンバーが集まり、成田市ほこみち推進プロジェクトチーム、通称「なりみち」プロジェクトがスタートしたのです。

当初は、1年単位で社会実験と検証を繰り返し、3️年間で成果を出すといったざっくりしたスケジュールを考えていました。しかし、チームを立ち上げ、最初にメンバーと議論したところ、「われわれ自身がしっかり勉強してから実験をしたほうがいいんじゃないか」という意見が出て、まずは自主勉強会からスタートすることになったのです。

令和4年度は、ほこみち制度の内容からエリアマネジメントやまちづくりまで、関連する事項について全員で勉強しつつ、有識者の方々を招いて講演やまち歩きなどを重ねてきました。

「成田市ほこみち推進プロジェクトチーム」による取り組みスケジュール(R5年12月時点)

成田市ホームページより転載

駅前広場と新勝寺表参道で社会実験を実施!

――勉強会を経て、令和5年度にいよいよ社会実験を実施したのですね。

富澤 はい。実証実験を行う場所は、人が集う場所、滞留を生み出したい場所という観点から主要な駅前広場としました。第一段階として選んだのが、①JR成田駅参道口広場 ②京成成田駅、②京成成田駅東口歩行者通路及び歩行者デッキ(以下、京成成田駅東口ペデストリアンデッキ) ③京成公津の杜(こうづのもり)駅前広場と、成田市の顔とも言える④成田山新勝寺表参道の約800mの区間の計4箇所です。

内容は、場所によって様々ですが、市民が気軽に場所を借りて使いやすい形態ということもあって、キッチンカーの営業が多いです。また、京成成田駅東口ペデストリアンデッキでは、10月14日に地元企業を中心とした実行委員会と連携して「ナリタノヒカリ」というライトアップ・イベントを開催し、ペデストリアンデッキをステージとする路上ライブや飲食物の販売などを行いました。

こうした取り組みは、アンケートで市民の反応を確認しながら進めています。2024年3月でいったん報告書をまとめますが、社会実験はその後も続けるつもりです。

――社会実験では何を検証するのでしょうか?

富澤 持続可能なスタイルにするために、まずは現行の交通などを変えずにできる場所を探しました。次に、その場所を囲って占用したときに、歩行者の邪魔にならないか、騒音などで苦情は出ないか。逆に、それらの場所の新しい使い方として、こんな使い方ならうまくいくのではないか、といったことを確認しています。

新勝寺の表参道については、以前から観光客が増えて車両通行止めになる11月の「紅葉まつり」の時期に合わせて社会実験を行いました。やってみて、「もっとやろうよ」ということになれば、車両通行止めの時間を延長するなど、様子を見ながら次の段階へ進めるのがポイントだと思っています。

行政主導でイベントを行うより、市民が公民館や体育館を借りてサークル活動をしている延長で、道路も使ってもらう。そうすることで、自律的な秩序が生まれ、理想的な場づくりができれば、と思っています。

許可申請や出店ジャンル調整には課題も

――社会実験で明らかになった課題はどのようなことですか?

富澤 一つは申請です。道路法では、道路を占用するには道路管理者に申請をして許可を得ることが定められています。もともと道路は、公共施設のように日替わりで貸すような運用を想定していないので、使用者側はそのつど許可申請をしなければいけません。

また、道路交通法では、警察に道路使用許可を申請する必要もあります。紙の申請書類を持参しなければいけない、1回の申請ごとに料金がかかるといった問題もある。業者が公募に入札する5年間の長期占用なら、手続きは1回で済むので問題になりませんが、単発のイベントなどの利用ではやや面倒です。

藤原 出店予定の調整も課題です。出店者調整をあらかじめ行わずに出店受付をすると、社会実験では、同日にクレープ店が3つ出店しているなど、キッチンカーの品目が重複してしまうことがありました。そうなると各店の売上が伸びず、なりみちの参加者が減ってしまうのではないか、という心配があります。

岩瀬 新勝寺の表参道では、キッチンカーを出すのではなく、参道に面したお店の軒先を道側へ広げてテーブルと椅子を出したり、商品を並べたりしてにぎわいを創出する計画です。ただ、普段はできないことが「実験中だけできますよ」と説明しても、お店の方々には「なぜ今だけなの?」と思われてしまいがちです。実験をしてメリット・デメリットを確認したうえで、できることから進めていければ、と思っています。

――次年度以降に向けて検討している点を教えてください。

富澤 せっかくほこみちに指定しても、手続きや使用料がハードルになって使ってもらえないのでは意味がないですから、オンライン申請など、運用面で工夫できることはないか検討しているところです。

また、空間の整備に関しては、「歩行者(来訪者)の座る場所がない」という課題も浮き彫りになりました。滞留してもらうには、気持ちよく休めるところが必要。今年度は少しだけ予算を取り、ベンチを発注しました。

藤原 出店者調整に関しては、出店者から「同じジャンルが重ならないようにできないか」といった意見もいただいていますが、行政側から「出店被りになるから、あなたはキャンセルしてください」とは言いにくい。どの日にどのジャンルの店が、いくつ申請しているかを見える化できれば、出店者側で判断してもらえるのかなと思っています。

――社会実験で得た手応えは?

川島 「ナリタノヒカリ」を実施してみて、京成成田駅東口ペデストリアンデッキがとても使いやすい場所だと分かったのは収穫でした。人通りは朝夕に多く、昼間や夜間は閑散としているのですが、人を呼び込むポテンシャルはある、と。

イベントが始まってすぐは横目で見て通過する人が多かったのですが、賑わってくると自然に人が集まってくることも分かりました。出店者たちもそこは感じていたようなので、今後、集客のためにどんな案内をすると効果的か、考えていくつもりです。

藤原 公津の杜駅前の国際医療福祉大学には、国家戦略特区制度を活用した医学部が開設されています。キャンパスには教職員も含めると2,500人ほどおり、そのうち約200人がランチで外に出ているのを確認しました。

そこでなりみちプロジェクトとして、キッチンカー事業者の方々に営業をかけました。大学とも連携して学生にアンケートをしたり、商店会に話を聞いたりして、学生の希望に沿ったキッチンカーを出してもらうことになりました。

毎日4店舗ぐらい出店しており、学生からは「ランチの選択肢が広がった」、出店者側からも「売上が上がった」と喜ばれています。今後も大学と商店会などをうまくつないで駅前をにぎやかにできれば、と思っています。

自然ににぎわいが生まれる環境をつくりたい

――「なりみち」を普及させるために、どんな広報活動をしていますか?

富澤 「なりみち」という愛称は、まずプロジェクトチーム内でアイデアを出し合い、9つの候補を挙げて庁内の投票によって決定したものです。「成田のほこみち」なので「なりみち」ですね。

普及についてはまだ手探りですが、現在、広報ツールとして大きくはインスタグラムとLINE、市のウェブサイトの3つでアピールしています。広がりは今のところインスタグラムが一番で、フォロワーは600人を超えました。チームメンバーが「なりみち」のロゴを作ってアカウントを運営しており、参加者の募集やイベント開催のもようなどを伝えています。

なりみちプロジェクトインスタグラム

――プロジェクトが最終的に目指すところは?

富澤 本当のにぎわいというのは、意図してつくるものではなく、環境が整っていれば自然に生まれるものだと思います。われわれは今後もそこを大事にして取り組んでいきたい。そのためには、手続きのハードルを下げつつ、秩序が保たれるように運用面で工夫することです。

「ほこみちに指定されれば、こういう使い方ができる」ということが定着して、農家の方が直売所をつくるとか、バラエティー豊かなキッチンカーが出店するとか、ナリタノヒカリのようなイベントの舞台になるとか。自然にそういう活動が活発になればいいな、と思っています。

――場所を貸し出す仕組みの整備を並行しつつ「なりみち」を指定し、運用していくロードマップを描いておられるのが素晴らしいと思います。成田市のみち活がこれからも楽しみです。ありがとうございました。