全国のカラフルなみち活事例大集合!ほこみち最前線 <前編>​​ ― ほこみちインスパイアフォーラム2023 ― 

2023/12/28

「道はもっとカラフルでいい!」をテーマに、2023年11月30日(木)に開催された「ほこみちインスパイアフォーラム2023 ~みち活新世紀“みち”から始まるまちづくり~」。

今回の記事では、全国の実践者の皆さんからの生の声で、みち活事例とその背景や思いをお聞きした「ほこみち最前線」のコーナーについてご紹介します。前編は、長崎・狛江・上野の3事例です!

みち活は、地方都市を豊かにする!これまでの実践とつなぐ、長崎市のほこみち

〈登壇者〉

平山 広孝さん  /  ⻑崎市まちづくり部 まちなか事業推進室

トップバッターは長崎市職員の平山 広孝さん。大学で景観デザイン・都市デザインを学んだのち、2010年に任意団体「長崎都市・景観研究所」を設立。2011年に長崎市役所に入庁し、公私両面でまちづくりに取り組んでいます。

長崎市は傾斜地が多く、まちなかは海に面するエリアにギュッとまとまっていることから、自然にコンパクトシティ的な在り方になっているのだとか。歴史、文化、景観などに恵まれた土地柄でありながら、一方で人口社会減全国ワースト2位という課題もあります。

さまざまな取り組みのなかでも、道路利活用(みち活)に関連する観点では、地域資源を活用し、市民が案内をするまち歩き博覧会「長崎さるく博」などを行なっています。

また、新幹線駅や、港湾の船舶停泊地​​整備など市街地全体で開発が進んでおり、まちなかをどのように活性化していくかが平山さんたちのミッションに。現在はエリアの魅力づくり、回遊性向上、多様な方が関わるまちづくりなどの実現を目指した「まちぶらプロジェクト」に取り組んでいます。

そのような背景を持つ長崎市のほこみちに関連した取り組みは2つ。1つめのは国道34号(国管理区間749.3m)の活用です。2023年4月にほこみちとして指定され、市も連携したまちづくりの一環として、これから国道の使い方を考えていきたいと意気込みます。

2つ目のほこみちは、銅座川プロムナード整備です。老朽家屋の密集や周辺道路の渋滞や歩道の狭さ等の課題を解決するために、暗渠の撤去やまちの防災機能の向上なども目的に取り組んでいます。​​現在は工事段階ですが、将来的に幅員15mの道路のうち、銅座川側の6.5mを歩道化し賑わい空間とするため、実証実験等を行っています。

(銅座川プロムナード完成イメージ。ミズベリングの取り組みも掛け合わせられたらより面白そう!と平山さん。)

平山さんは「長崎市は人口減少という課題がありながらも、まちなかに多くの人の姿がある。これは今まで、コンパクトでウォーカブルなまちづくりをしてきたからだと思っています。今後もこうしたまちづくりを行っていくと同時に、ほこみちと連動させていくことができたら絶対地方都市は豊かになる。皆さんとも一緒に、そういったまちをつくっていけたら。」と語ってくれました。

これから本格的にスタートする長崎のみち活。これまで積み重ねてきたまちづくりをさらに加速させる仕掛けとして、要注目ですね!

「楽しかったね。」をまちに生み出す、狛江の目指す「市民が主役のほこみち」

〈登壇者〉

銀林 悠さん   /  一般社団法人狛江まちみらいラボ チーフディレクター

続いては、東京都狛江市でほこみち活用に取り組む銀林さんです。狛江市が100%出資して、2023年10月に一般社団法人狛江まちみらいラボ​​を立ち上げ。銀林さんは、元々狛江市職員としてほこみちのプロジェクトを担当していましたが、10月以降は同法人の事務局長として引き続きプロジェクトに携わっています。

このプロジェクトが目指す狛江のほこみちは、「市民が主役のほこみち」。市民がどのようにほこみちに関わっていくことができるか、関わりしろをどう確保していくことができるかを考えながら、プロジェクトに取り組んでいるのだそうです。

狛江市のほこみちは来年2024年4月以降に運用をスタート予定で、現在は工事中の道路です。現在は準備期間で、昨年2022年から2023年にかけて、市民の方を巻き込みながら実証実験を行ってきました。

最初の取り組みは2022年10月に9日間行った、ほこみち社会実験です。駅周辺エリアへのほこみち導入を見据え、道路空間の活用可能性、活動団体の掘り起こし、交通への影響把握等を目的に実施しました。地域のプレイヤーの皆さんと一緒に、30ほどのプログラムを立案し、詳細を検討したそうです。

(ほこみち実証実験の様子。既に市内で活動するさまざまな団体が参加をし、ほこみちを軸とした新たな賑わいの可能性を感じられました。)

2023年には駅周辺エリアにおける収益化実験も実施。駅前のイベント広場で、平日日中の親子連れをターゲットにしたミニイベントと、地元のパン屋さんのパンマルシェを企画しました。また、駅周辺エリアで活動している市内のプレイヤーに呼びかけて、駅周辺の将来ビジョンを検討するエリアプラットフォーム「えきまち会議」を組成し、このオープニングとして「狛江ほこみちフォーラム」も開催したそうです。30名ほどの方が参加し、有識者の方の基調講演、プレイヤーの皆さんによるトークセッション、一般参加者との意見交換を実施し、狛江での今後のみち活実践への機運が着実に高まっている様子です。

銀林さんは、「これから狛江のほこみちで実現したい光景は、1日のなかでさまざまなプレイヤーの方が入れ替わりながら場がにぎわっていくこと。『今日は楽しかったね。』という言葉をまちに増やせるような、ほこみちを目指したいと思っています。」と意気込みを語ってくれました!

準備段階から市民の皆さんの関わりしろが設計されており、「市民が主役のほこみち」を一歩に実現している狛江のアクション。道路が完成し、運用スタートする2024年4月が待ち遠しいですね。

通りにある街路灯をアップデートし、課題解決する上野のみち活「ガイトウスタンド」

〈登壇者〉

永野 真義さん  /   東京⼤学大学院都市デザイン研究室助教 アーツ&スナック運動主宰

3番目に登場した永野 真義さんの取り組む「ガイトウスタンド」は、「街灯」と「街頭」両方の意味を持って命名されたアイデアです。その詳細を「『飲める街灯』からの歓楽街まちづくり」と題して、その取り組みを説明いただきました。

「ガイトウスタンド」とは、商店街の街路灯に着脱式のテーブルをつけ、歓楽街をフードコートのようにしてしまおうという取り組みです。場所は、上野・不忍池のすぐ南にある「仲町通り」。花街を起源とする歓楽街です。コロナ禍も相まって、飲食店の客引きが目立つようになり、課題をどうにかしたいと地元の方と話していたところから、生まれたアイデアだそうです。

17時の車両通行止めの時間から、地元の方々と一緒に街路灯にテーブルを設置。街路灯には周辺の飲食店MAPも設置し、気になるお店に行ってもらえるようにしました。MAPで行った店でのテイクアウト後は、お好きな街路灯のスタンドで飲食を楽しんでもらいます。また、衛生管理の面では近隣のメイドバーに協力をしてもらい、巡回でゴミ回収や消毒も行いました。

この取り組みは、コロナ禍で密にならず屋外での飲食を推奨した流れとも重なり、22店舗の協力を得て実施をしました。実施にあたり、当時のコロナ占用許可特例を活用。20本の街路灯にガイトウスタンドを設置しました。占用を街路灯の両側1mに収める必要があったこと、17時以降のみに設置すると言う制約から生まれた、コンパクトで着脱可能なデザインは汎用性も高く、他の地域での活用にもつながったそうです。

(ガイトウスタンド活用の風景。通りづらかった場所に談笑や賑わいが生まれると、居心地が良くなりそうです。)

研究者である永野さんは、学生の皆さんと調査活動も実施。同時に課題も明らかにしながら、コロナが落ち着いて以降も継続して実験を行ってきました。

今回ガイトウスタンドを実施してきた仲町通りは歩道なしの8m道路。ほこみち実践の多くは歩道の活用ですが、歩道のない道路でもできるように実験を重ね、ほこみち指定を目指しています。

永野さんは「ガイトウスタンドは、既存のものに手を加えて、通りをアップデートする取り組み。それも、自分たちでできる方法で、手軽に素早く行うことができる方法です。ガイトウスタンドは設置マニュアルも公開しているので、ぜひ真似してみてもらえたら。」と、参加者の皆さんにもエールを送りました。

大きな設備投資をせずとも、アイデア次第でスモールスタートができる実例を永野さんたちの取り組で示してくれました。より多くのまちで、ガイトウスタンド​​のようなみち活が増えれば、まちが道路からカラフルになっていきそうです!

さいごに

前編3事例、いかがでしたか?ほこみちのはじめ方やまちづくりの中での位置付け、地域内での連携など、それぞれの工夫を垣間見えましたね。より詳しい背景や内容、実際の実証実験の様子などは下記アーカイブ動画よりご覧いただくことができます。ぜひ、皆さんのまちでのほこみち検討・実践にお役立てください!

関連リンク

長崎の事例をより詳しく知る

天然のウォーカブル都市をアップデート!「長崎みち活会議」 (ほこみちプロジェクト)

https://hokomichi.jp/2023/10/23/post-867/

狛江の事例をより詳しく知る

狛江まちみらいラボ ウェブサイト

https://mlab-komae.jp

上野の事例をより詳しく知る

アーツ&スナック運動 ウェブサイト

https://www.ikenohata-nakacho.com